• 地元密着の優良店さんの募集

屋根工事の火災保険の手続きを塗装業者に依頼後、一旦お断りをしたら高額な手数料を請求されました…。

お客様からのお悩み 私はアパートを経営しています。そのアパートに私も住んでいるのですが、アパート建物の屋根の塗装などが剥がれてしまったので、見積もりを塗装業者さんにお願いしました。

ちょうどアパートに塗装業者のチラシが入っていたので、チラシに記載された電話番号に連絡し、その塗装業者にお願いしようと打ち合わせをして、見積りも出してもらったところ、火災保険の保険金を使って工事をすれば持ち出しをしなくて済むから、保険金をつかって工事をしようと言われました。
塗装業者が保険金の請求の手順を詳しく知っていたので、火災保険の会社に対する保険金の請求手続きを手伝ってもらい、実際、火災保険から保険金ももらうことができました。

ところが、その後に塗装業者から出された見積もり金額が、当初の打ち合わせで見せられた見積りよりもかなり高くなっており、詐欺的な業者なのではないかという不安が生じたので、私は塗装業者に対して、屋根の塗装工事をするかしないか、改めて検討させてほしいと申し出ました。
すると、塗装業者は、保険金請求時の事務手数料といって、かなり高額の費用を請求してきました。保険金請求時の事務手数料を、私は支払わなければいけないのでしょうか?

屋根工事のために火災保険を申請して保険金が下りた後、塗装業者さんに一旦お断りを入れた時に、高額な手数料を請求された場合、手数料は支払わなければいけないのか、小栗総合法律事務所の小栗先生に聞いてみました。
火災保険を利用した屋根工事のトラブルについて悩みを抱える、あなたのお力になれれば嬉しいです。

はじめに

台風の被害に遭われたとのこと、心よりお見舞い申し上げます。

依頼された塗装業者の対応に不信感をお持ちのようですね。

今回のご相談の内容からすると

  • 塗装業者には見積もりしか出してもらっておらず、
  • 工事の契約はもちろん、その他一切の契約をしていない状況で、
  • 火災保険の保険金請求時の事務手数料を請求された

このような状況であるとお見受けします。

上記3つの事実関係を前提として、ご相談者様が保険金請求時の事務手数料を支払わなければならないか、を一緒に考えていきましょう。

事務手数料の請求に法的な根拠はあるの?

何かをしたことに対する対価として「手数料」や「報酬」を請求できる、法的な根拠として考えられるのは、「契約を締結したこと」が挙げられます。

しかし、ご相談者様は今回の場合、屋根の塗装工事の見積もりは依頼したが、塗装工事の契約はしていないし、ましてや保険金請求の代行をお願いするという契約もしていません。

今回のように保険金を使って工事をしましょうという悪徳業者は多く、こういったケースでの悪徳業者の手口は「工事にあたって自己負担がないかのように勧誘」し、そのうえで「保険金の請求を手伝い」、工事の依頼を断りにくくして「工事の契約を取りやすくする」ことにあります。

場合によっては、実際に見込まれる工事代金を高めに出し、請求する保険額を吊り上げ、最終的に自分のポケットに入ってくる工事代金を多くする…といったことを念頭に置いている悪徳業者もいます。

こういった悪意のある業者の場合、工事の契約書には工事の着手未着手にかかわらず、依頼した側が工事の契約を解約すれば、

「保険金の○%を支払わなければならない。」
「見積代金の○%を支払わなければならない。」

このように定め、とにかく工事を依頼した人から保険金を巻き上げるような内容にしているケースも見受けられます。

もし、「台風で破損した屋根を保険金の範囲内で修理しないか。」などと言って、工事契約の勧誘をしてきた業者がいたら、必ず契約書にサインをする前に、契約書の内容を確認するようにしましょう。

幸い、ご相談者様はまだ塗装工事の契約も、保険金の請求代行の契約もしていません。

したがって、業者の言い分に法的な根拠はなく、支払う必要はありません。

また、仮に業者から「あなたが保険金請求の代行を依頼したじゃないか。」と言われたとしても、手数料額について何も話し合っておらず、合意が成されていなかったのであれば、やはり代金を支払う必要はありません。

(保険金請求の事務手続の代行は、民法上の委任契約の一種と考えることができますが、料金が発生することを合意しない限り、無償であるとされています。)

保険金の請求を代行してもらうことについて

ご相談者様が契約している、保険の保険約款を見てみてください。

「保険金の請求は被保険者自身が行うこと」と、書かれていないでしょうか。

保険金をだまし取ったり不適切な請求を防ぐため、通常保険金の請求は、

  • 被保険者本人
  • 指定代理人
  • 損害保険代理店

これら三者にのみ認められています。

基本的に、上記のいずれにも該当しない者が、保険金の請求を代わりに行うということは認められておらず、今回のご相談者様のケースでも同様です。

ご相談者様の行為は、保険会社との保険契約に違反していることになり、場合によっては、すでに支払われた保険金の返還を求められかねない契約違反です。

保険契約の違反を防ぐという意味でも、「保険会社への申請は代行する」と言って工事を勧誘してくる塗装業者の誘いには、乗らないようにしましょう。

巻き込まれるトラブル

「保険金の申請を代行する」とうたう塗装業者の場合、下記のようなトラブルも考えられます。

トラブル例1 被害が自然災害などの事故によるものではないと知りながら、保険金請求の際に保険会社に伝える請求の理由を「雪害・風水害で壊れた」ということにする。
トラブル例2 「保険会社には200万円の工事価格として保険金請求をするが、実際の工事費用は60万円だ」と、保険金請求の際に提出する工事費用の見積もりを、水増しする。

こうした理由で保険金を請求し、支払いを受ければ、「保険金詐欺」に該当してしまい、ご相談者さま自身も詐欺の罪に問われる恐れがあるのです。

まとめ

今回のケースでは、ご相談者さまが工事業者に対して、事務手数料を支払う必要はありません。

また、今後は「保険金を使って工事をしましょう」と言ったり、「保険金の請求は代行します」と言ったりする業者とは付き合わず、工事の依頼もしないようにしてほしいです。

小栗先生の紹介ページはこちら 今回、屋根工事のための火災保険に掛かる手数料についてご回答いただいた、小栗先生の詳細は下記ページで確認できます。 今ご覧いただいている記事以外にも、屋根工事・外壁塗装で起きるトラブルについて記事を監修いただいているので、そちらも下記ページからご確認いただければと思います。
小栗総合法律事務所の詳細