• 地元密着の優良店さんの募集

所有アパートの塗装工事で、洗濯機に砂利が入ったとクレームがあり、買い替えの費用を請求されました…。

お客様からのお悩み 私は、アパートを所有しています。
オーナーとして所有アパートの管理を行なっているのですが、アパートの屋根と外壁が、経年により劣化が進んできたこともあって、塗装工事を行うことにし、塗装業者に工事を依頼しました。
塗装工事は順調に進み、塗装業者からは工事が完了したと説明を受けたのでほっとしていました。
しかし、入居者からクレームがあり、ベランダに置いてある洗濯機にカバーを掛けてもらえず、中に砂利が入ってしまって、買い替えが必要になったというのです。そして、買い替え分の費用を求められました。
塗装業者に対して、入居者の家財を賠償してもらうよう、請求することはできるのでしょうか?
また、私自身が責任を問われることはありますか?

所有しているアパートの屋根・外壁塗装後、ベランダの洗濯機に砂利が入って買い替えが必要になったと、入居者からクレームが…。買い替え費用は支払わなければいけないのか、弁護士の小栗先生に聞いてみました。

はじめに

入居者からのクレームは、アパートのオーナーさんにとってよくある、そして頭の痛い問題ですね。

まず、入居者の要求にオーナーとして応じる必要はあるのか、ある場合には塗装業者に金銭の負担を求めることはできるのかを、一緒に考えていきましょう。 ※ここでは、管理会社等を通さず、オーナーさんが直接アパートの維持・管理を行なっている事を前提とします。

入居者のクレームにどう対応するべきか

ご相談のケースでは、アパートの入居者の方から「洗濯機の買い替えに必要な代金を払ってほしい!」という要求を受けていますね。

対応方法について、いくつかのポイントに分けてみていきましょう。

1.事実関係の確認

まずは、入居者と塗装業者の両方に事情を確認してみましょう。

カバーを掛けてくれなかったという入居者の言い分が正しいのか、確認する必要があります。

塗装業者に事情を聴いたら、例えば、

「カバーを掛けていないが、そもそも屋根と外壁の塗装のみを行う予定で、粉塵が舞うような事態は想定していなかったため、カバーを掛けることはしていない」

このような説明があるかもしれません。

また、「砂利が入って買い替えが必要になった」とのことですが、外置きの洗濯機であれば、塗装工事に関係なく砂利が入ることは大いにあります。

さらに、砂利が入ったと言っても、洗濯機が稼働すれば問題はないのですから、

  • 塗装工事のせいで砂利が入ったのかどうか
  • 入った砂利によって洗濯機が動かなくなったのかどうか

これらを確認してほしいです。

洗濯機が動かなくなったことの原因が塗装工事に無いのであれば、オーナーであるご相談者様も、塗装業者にも、賠償する義務はありません。

2.砂利が洗濯機に入ったのは塗装工事が原因で、その砂利によって洗濯機が壊れてしまった場合

この場合、法律的に見れば工事に問題があって、それによって入居者に損害を生じさせたのは塗装業者ですから、塗装業者が入居者に対して、入居者の損害を賠償する義務を負うというのが一般的です。

もっとも、入居者はオーナーであるご相談者様に対しても、塗装業者と同じく賠償を求めたいと考えるでしょう。

では、ご相談者様も責任は負うのでしょうか。

塗装業者は、ご相談者様が依頼した屋根と外壁塗装工事を完了しました。

これは、本来、オーナーであるご相談者様が、賃貸借契約の貸主として負っている、入居者の皆さんに対するアパートの修繕義務を果たすために行なったものです。

修繕義務を果たす手段として、ご相談者様は塗装業者を選び、工事を依頼していますから、オーナーであるあなたと塗装業者との間で、塗装工事の契約を結んでいるでしょう。

一般に、工事とは「請負契約(うけおいけいやく)」と呼ばれる種類の契約です。

原則として、請負人(塗装業者)が第三者に対して負わせてしまった損害について、請負契約の注文者(今回のケースではご相談者様)は賠償する義務を負いません。

しかしながら、民法では例外的に、請負人(塗装業者)に対する依頼内容に漏れ・不備などがあった場合は、賠償する義務を負うことがあります(民法716条)。

つまり、塗装業者に対して依頼内容を説明した際に、ご相談者様が依頼を伝え漏れていた場合、ご相談者様と塗装業者は一緒に、入居者が受けた損害を賠償する責任が発生するのです。

3.オーナーとしてまず対処すべきこと

ここまで見てきた通り、事実関係の調査が無いまま、入居者の要求に応じる必要はありません。

入居者は本当に損害(=洗濯機の故障による買い替えの必要)があったのか、その損害は工事によって発生したものなのかどうかを、冷静に見極める必要があります。

そして、工事と洗濯機の買い替えに因果関係が無いようであれば、それはただの言い掛かりとも言えるので、責任は負わないという事をはっきりと伝えましょう。

ただ、あなた一人で入居者と対峙するのには、労力も体力も必要になるものなので、困った時には弁護士に相談してみるのもオススメです。

トラブルを回避するためにオーナーができること

入居者が暮らすアパートに、修繕工事や塗装工事を行う場合は、必ず事前に工事の実施をお知らせしておく必要があります。

また、生活に極力影響が出ないよう配慮したり、入居者自身にも出来る限りの対処をお願いしておくことが望ましいです(汚れが気になるものは室内に入れておく等)。

入居者へお知らせするべき内容としては、

  • 工事の内容
  • 工事のスケジュール(予定している工事期間)
  • 工事を行う時間帯
  • 工事を行うことで発生する可能性がある事(騒音、汚水、粉塵など)
  • 塗装業者の会社名・工事責任者の名前・連絡先など

これらが挙げられますが、入居者にとって知っておくと嬉しいような情報であれば、上記に限らず伝えてあげるようにしましょう。

小栗先生の紹介ページはこちら 今回、塗装工事によって入居者から、洗濯機の買い替え費用を請求されるクレームについてご回答いただいた、小栗先生の詳細は下記ページで確認できます。 今ご覧いただいている記事以外にも、屋根工事・外壁塗装で起きるトラブルについて記事を監修いただいているので、そちらも下記ページからご確認いただければと思います。
小栗総合法律事務所の詳細