外壁塗装中に起こってしまったトラブル 外壁塗装の業者には気をつけてもらっていたが、塗装中に塗料が飛散してしまって、隣の家の車に塗料が付いてしまいました。
隣の方から車の修理代として、損害賠償を請求されているのですが、どうしたらいいですか?
外壁塗装時中の飛散について、よくトラブルが起こる問題を小栗総合法律事務所の小栗先生に聞いてみました。あなたの参考になれれば嬉しいです。
ご質問のご回答
外壁塗装を行った際に隣人の所有物に塗料が飛散してしまうといったことは、気をつけていたとしても発生してしまうトラブルの一つです。
塗料の飛散に関するトラブルはとても多く、法的な解決が必要になるケースも…。
あなたが、このようなトラブルに巻き込まれてしまった場合、スムーズに解決するためにも、まずはあせらず、発生しているトラブルの状況をきちんと整理する事からしていきましょう。
状況の整理・確認しておきたい事
外壁塗装中に起こってしまった塗料飛散のトラブルですが、まずは落ち着いて以下の状況を確認してみましょう。
トラブルになっていると不安が先にきてしまいますが、きちんと事実関係を理解・把握することで、落ち着いて次に進めるようになります。確認すべき事実の例は、以下のとおりです。
チェックポイント
- 損害賠償を請求された時期(塗装中?塗装後?)
- どんな飛散防止の処理を行っていたか
- 塗装中の風の強さ
- 外壁塗装で使用していた塗料の色と、飛散してしまった車に付いた塗料の色の一致不一致
- 近所で同じように外壁塗装を行っている家はあったか
- 塗料が飛散した時期(いつ確認されたのか)
- 損害賠償で請求されている金額は、本当に妥当で適正な金額なのか。など、隣人の車に飛散している塗料は、本当にあなたのお家の塗装工事によって付けられたものなのか。また、請求されている金額は適正な金額か、などの確認が必要です。
- 業者の保険加入の有無:請負業者賠償責任保険に加入しているか
あなた自身で解決する場合も、弁護士などの第三者の力を借りて解決する場合も、まずは状況の理解・把握が必要です。
特にトラブルが大きくなってしまい、法的な観点からの解決をしなくてはいけなくなってしまった場合、弁護士へ相談するためにも、状況がひと目で分かるよう情報をまとめておくと、スムーズな解決へと導くことができます。
上記のポイントを踏まえて、以下に具体例を挙げて何点か説明します。
損害賠償を請求された時期
塗装工事中に塗料の飛散を発見したのであれば、あなたのお家で塗装された際に発生したものだと検証もできますが、塗装工事から随分時間が経ってから損害賠償を請求された場合、本当にあなたのお家の外壁塗装が影響していたのかの検証は困難ですし、即時に請求をしないということからも、隣人の主張の正当性が疑わしいものといえます。
また、あなたのお家の外壁塗装工事で飛散したのではなく、近所で行っていた別の外壁塗装の塗料が、強風にのって飛散した可能性も否定できません。
そのため、本当にあなたのお家で行っていた外壁塗装時に飛散した塗料が付着したのか、事実確認をしなくてはいけません。
なぜこのようなトラブルが発生してしまったのか?
仮に、隣家の車に付着してしまった塗料が、あなたの家の外壁塗装中に飛散した塗料であったならば、外壁塗装中の塗料の飛散トラブルが、なぜ発生してしまったのかを確認する必要があります。
そもそも、通常は外壁塗装を行う場合、塗料の飛散を予め想定して、飛散を防止する保護シートを足場の周りに取り付けます。また、近隣に駐車してある自動車など塗料が飛散する可能性があるものには、カバーをかけるなどの養生をして作業を行うことが一般的です。
発生した原因の例
- 飛散を防止する保護シートの処理が適当だった
- 風が強い日であることをわかっていながら塗装を行った
- 職人の仕事が雑だった
- 管理体制が甘かった
外壁塗装業者側が想定できない不可抗力(急な突風の発生など)でトラブルとなってしまう場合もありますが、上記の例は、外壁塗装業者側に管理不備があるものです。具体的には、塗料の飛散防止対策は十分に行う、悪天候が見込まれる日には塗装そのものを中止する、といった対策を採らなかった点に、外壁塗装業者の落ち度があるものといえるでしょう。
そのため、外壁塗装を行うには優良店へ頼むのがオススメです。
外壁塗装業者の落ち度について注文者であるあなたが責任を負う場合
民法716条1項では、注文者は原則、請負人の仕事から第三者に生じた損害について賠償する責任を負わないと定めています。
つまり、あなたは、外壁塗装業者が自らの落ち度によって、隣人の車に塗料を付着させてしまったことについて原則として損害賠償責任を負いません。
しかしながら、同但し書きでは、「注文または指図についてその注文者に過失があったとき」は注文者も責任を負うとされています。①注文者が実際に請負人に対して指図や注文をしており、その指図や注文が不適切であった場合、②施主が請負人に対して指図や注文をしておらず、その「指図や注文をしなかったこと」が不適切と評価される場合などが、ここにいう注文者に過失があったときです。
また、民法に基づく責任とは格別、実際には隣人との今後の関係性を考慮して、あなた自身がまずは隣人にお支払いをし、外壁塗装業者への金銭の請求はあなたが行うといったこともありえるでしょう。こうして考えると、外壁塗装業者の選定は慎重に行うべきです。
どうやったら防げていたのか?
外壁塗装中の飛散トラブルを防ぐためには、未然に防ぐことも必要ですが、トラブルになってしまった場合のことも考えて、行動しておく必要もあります。
どのような行動をしておく必要があるのかは、以下で詳しく見てみましょう。
トラブルを未然に防ぐためには?
外壁塗装中の塗料飛散のトラブルを防ぐためには、以下が必須です。
- 優良店で一つ一つ丁寧に作業してもらう事
- 飛散防止の対策を十分にしておく事
- 保険に加入している業者を選ぶこと
どれも当然の事だと思われますが、塗装業者と一言で言っても、お客さまの立場で考えられる人もいれば、中には自社の利益だけを考えている悪い人も居ないとは限りません。
本当にお客さまのことを考えてくれているのであれば、塗装中も飛散に関して配慮をしてくれるので、トラブルが起きにくくなります。
トラブルが起こってしまった場合を考えた行動とは?
塗料の飛散トラブルは気をつけていたとしても起こってしまう場合があります。
そうなった時でも、すぐに対処したり、隣人との関係性を保つためにも、以下のことを必須で行っておきましょう。
- 業者と一緒にご近所への挨拶回りを行っておく
- ご近所に万が一トラブルがあっても、業者側で責任をとる説明をしておく
たとえお隣さんと仲が良い関係を築いていたとしても、こういったトラブルがもとで亀裂が入るかもしれません。
塗装前に挨拶回りを行い、塗装の危険性を伝えておくだけでも被害を防いだり、被害を小さくしたりできる方法です。トラブルが起こってしまったこともあらかじめ念頭において、塗装前にしっかり考えて行動しておきましょう。
今回の解決方法
① 塗料の飛散があなたが行った外壁塗装工事に起因するものかを確認し、もしそうであれば、不可抗力によるものか外壁塗装業者側の落ち度によるものかを確認します。
② ①の結果次第で、誰が、どの範囲で損害賠償責任を負うかがかわります。
③ 外壁塗装業者またはあなたが損害賠償責任を負う場合、隣人に生じた損害について賠償を行います。仮に、外壁塗装業者に責任があるのにあなたが立て替えて払ったような場合、あなたは外壁塗装業者に立替分を請求することが可能です。
そのほか
請負業者賠償責任保険とは、外壁塗装業者が、必ず入っておくべき保険の一つであり、この保険に入っていると、今回のケースでも保険契約の範囲内で保険金を支払うことで解決できる場合があります。また、以下のようなケースでも保険金の支払いの対象となる場合があります。
- 外壁塗装中に足場から道具を落としてしまい通行人に怪我をさせてしまった
- 塗料が飛散してしまって隣人の建物に付いてしまった
- 足場が崩れて隣人の建物を壊してしまった
対人・対物事故への加害者側(外壁塗装業者)の「損害賠償金」だけでなく、「弁護士費用」などの各種費用も、請負業者賠償責任保険で保証してもらえることがあります。
あなたと外壁塗装業者との間で、隣人への損害賠償責任をいずれが負うのかといった点からトラブルになることもありえますので、トラブルになった後はもちろん、事前に弁護士相談することで外壁塗装業者との交渉をスムーズに進めることができます。
弁護士にお願いすると費用が高いのではないか?と思われるかもしれませんが、実際にトラブルが発生した場合にかかる心理的な負担や、それを解決するために割かなければならない時間を考えると、あなたの代理人として解決へと導いてくれる弁護士の存在が、あなたの強い味方となってくれます。
小栗先生から一言 飛散トラブルを起こしてしまった時の備えとして、外壁塗装業者が請負業者賠償責任保険に加入しているかは、必ず確認しましょう。
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