執筆者
多胡安那(気象予報士・熱中症予防管理者(指導員))
多胡安那さんの詳細はこちら
道路、線路、空路。
世の中には移動するための「道」がたくさんあります。
今は距離やかけられる時間によって、自由に使う”路”を選ぶことができますが、 かつては川も人々が歩む路でした。
東京都の柴又と千葉県の松戸の間を木製の船で渡っていく「矢切の渡し」。
歌謡曲や小説の舞台にもなりましたが、 これは江戸時代初期、江戸川を挟む田んぼを持つ農民が 関所を通らず江戸を往復したことが始まりで、今でも柴又と松戸間を往復しています。
このように小舟でも行くことができる松戸市ですが、 「都心に一番近い田舎」とも言われるほど利便性が高いエリアとして有名です。
松戸市は都心から約20キロメートル、電車で約30分の距離にあり、 首都圏の住宅都市として発展をとげてきました。
松戸市内には6本の鉄道が走るなど通勤や通学が便利な場所ですが、 車でのアクセスもよく、東京へつながる道が多い街です。
また、都心から近い割りに自然が多いのも松戸市の魅力。
市内の大きな通りには、さくらやイチョウ、こぶし、けやき、 きんもくせいなど、樹木の名前がつけられています。
そんな交通の便が良く、自然も多い松戸市は天気も比較的おだやかで、 外壁塗装はしやすいエリアといえるでしょう。
秋と梅雨は長雨シーズン 塗装作業は計画的に
松戸市は同じ千葉県内で比べても比較的、風が弱く、天気もおだやか。
それほど荒れた天気になることは多くありません。
年間降水量は1400ミリを少し超えるくらいありますが、同じ千葉県内でも 南部にくらべると雨量は少なめ。
日降水量が50ミリを超えるような日は少ないエリアです。
ただ、台風が来たり、コンスタントに低気圧が通過するような時には まとまった雨となり、交通機関に影響がでるようなこともあります。
特に梅雨から秋にかけては雨量が多く、大雨になりやすい時季です。
月降水量で比較してみると、一年で最も多いのが10月で平年だとおよそ230ミリ。
つづいて、9月も多く、180ミリ近くの雨が一か月で降ります。
この時季はちょうど秋雨シーズンにあたるため、ひとたび秋雨前線が停滞すれば、 何日も雨が続くことも。
秋の長雨シーズンは雨の原因が複数あることが多いので、 それだけ雨量も多くなりがちです。
また、季節柄、台風シーズンでもあるため、前線+台風という状況になれば、 記録的な雨量になることもあるでしょう。
秋雨前線が停滞しているような時に台風もやってくれば、雨だけでなく、風も強まって、 災害につながるおそれもあります。
前線が停滞したり、台風が近づくことが予想される際は、 雨・風が長引くことも想定して作業スケジュールを立てるようにしましょう。
そして、秋に次いで雨が多いのが6月で、月降水量は平年だと140ミリを超えます。
これは梅雨前線によって雨が多くなるためで、秋と同様、長雨になりやすい時季です。
梅雨の晴れ間であっても、高温多湿の空気が充満しているため、 大気の状態は不安定になります。
夏の夕立のように、急な雨に見舞われやすくなりますので、 この時季の外壁塗装は空模様の変化に注意が必要となります。
雨が多くなる秋と梅雨時は、天気によってやむを得ず作業を中止することも多くなるため、 他の季節よりも時間がかかるかもしれません。
長雨や急な雨によって作業が滞ることを考慮しながら、 スケジュールを立てた方が良さそうです。
外壁塗装は湿気が大敵
外壁塗装は湿気が大敵な為、雨の日だけでなく湿度が高い日は作業に多くの時間を要します。
外壁塗装は塗料を乾燥させて塗膜(とまく)といった塗料を薄い層で重ねていきますが、 湿度が高いとしっかり乾燥させることができないためです。
特に梅雨時は雨が降らない日でも湿度が高くなるため、より時間がかかり、 作業自体ができない日もでてくるでしょう。
雨の日や湿度が高い日に作業を進めてしまえば、塗料がしっかりと定着しないため、 剥がれてしまうリスクが高くなります。
特に湿度が85%を超えるような日は塗料がかわきづらくなるため、 時間をかけて作業する必要があります。
雨や湿度の高い時期に塗装を予定される場合は、余裕をもった作業スケジュールを立て、 晴れのタイミングを狙って、効率よく作業するといいでしょう。
先の予定は週間予報の信頼度をチェック
長期間におよぶ塗装作業の際、予定を立てるのに役に立つのが、 週間予報の「信頼度」です。
気象庁の週間予報には、あさって以降の予報に関しては 「信頼度」というものが記載されており、 出ている予報が今時点では“どれくらい当たりやすいか”を判断することができます。
今の予報精度だと、当日や翌日の予報はかなり当たりやすくなっていますが、 あさって以降はどうしても精度が下がっていきます。
そのため、あさって以降の予報に関しては、週間予報にA、B、Cと 信頼度ランクを付けることで、現時点においての予報の当たりやすさを示しているのです。
参照:気象庁 HP
具体的には、あさって以降の降水の有無の予報について、 「予報が適中しやすい」ことと、「予報が変わりにくい」ことを表しており、 信頼度が高い順にA,B、Cと記載されます。
たとえば、信頼度Aの時の雨予報は、雨が降る可能性が高く、 ほぼ予報が変わることはありません。
一方、同じ雨予報であっても、信頼度Cの日は予報の的中率が低く、 今後、予報が変わる可能性がやや高いことも意味しています。
屋外での外壁塗装作業はどうしても天気に左右されてしまうため、 長期的なプランニングには、週間予報のチェックが欠かせません。
作業スケジュールを立てる際は、日々の天気マークだけでなく、 週間予報の信頼度も参考にしてみるといいかもしれません。
冬季は塗装最適シーズン
一方、冬は外壁塗装にとってベストなシーズンと言えます。
外壁塗装に適した気象条件は「晴れて空気が乾燥している」ことなので、 松戸市の塗装は12月から2月にかけてが最適。
同じ千葉県でも海風が入りやすいエリアは湿度が高くなりがちですが、 松戸市はそれもないため、冬場は作業に適した時季といえます。
特に1月は日照時間が多いため、雨に邪魔されることも少なく、 塗装作業はしやすいでしょう。
寒さが厳しい季節となりますので防寒は必須ですが、 しっかり寒さ対策をして作業に取り組めば、順調に進めることができると思います。
初夏は“ひょう”にも注意
松戸市周辺は、ひょうにも注意が必要なエリアです。
比較的、おだやかな松戸市でも、ひょう被害に見舞われることがあります。
一年の中で最もひょうが降りやすいのは、日本海側では10月~1月であるのに対し、 太平洋側は5月~7月にかけて。
つまり、千葉県も初夏は特にひょうが降りやすい時期といえるんです。
ひょう被害の月別の発生数をみても、最も多いのは5月、ついで7月となっています。
実際、2000年の5月24日には関東各地でひょうが降り、 さまざまな被害をもたらしました。
この時は茨城県南部から千葉県北部にかけて激しい雷雨や突風が発生し、 それに伴って、ピンポン玉大から、みかん大のひょうを観測。
ひょうが住宅や学校を直撃したことでガラスが割れるなどの被害があり、 負傷者も多くでました。
また、被害は建物だけでなく、農作物やビニールハウスの倒壊などにも拡大し、 被害額はかなりの金額に。
ひょうが原因の被害としては、過去最大とも言われています。
初夏は地上付近の気温が上がってくる一方で、上空にはまだ冷たい空気が 残っている時期です。
そうなると、大気の状態が不安定になるため、雨雲が発達して、 激しい雷雨や突風をもたらすことが多くなります。
激しい雷雨や突風が起きるときは、ひょうも発生しやすいため、 初夏はひょう被害が多くなるわけです。
この日も、千葉県の上空5000メートル付近にはマイナス18℃以下の寒気が 流れ込んでいる中、地上の気温は30℃を超えている所がありました。
上空と地上の気温差が40℃以上開くときは、 ひょうなどの激しい現象に注意しなくてはなりません。
しかも、このような現象は突然起こることが多く、場所や時間を特定しにくいもの。
真夏は毎日のように夕立など天気が急変しますが、初夏も油断できない季節です。
1センチ未満の小さいものもあれば、この日のように、 ピンポン玉やみかん大の大きさのひょうが降ってくることもありますので、 初夏の塗装作業は空模様の変化に注意が必要です。
また、ひょうが降るエリアは幅が狭く、帯状の区域となるため、 局地性が強い現象です。
被害が大きかった所のすぐ近くで全く影響がないということも多いですが、 谷沿いや、川沿いなどはひょうが降りやすく、「ひょう道」と言われることも。
初夏に谷沿いや川沿いの建物を塗装する際は、 ひょうへの対策も考えておいた方がいいかもしれません。
「真っ黒な雲が近づいてくる」、「雷の音が聞こえてくる」、 「急に冷たい風が吹いてくる」など、激しい雷雨の予兆を感じたら、 ひょうが降ることも想定しておいた方がいいでしょう。
また、そのようなことが予想される日には、気象庁が前もって「雷注意報」を発表し、 注意を呼びかけています。
参照:気象庁 HP
屋外での塗装作業をする際は、雷注意報の発表状況も確認しておくと、 対策をとりやすくなるでしょう。
台風接近時は暴風が吹き荒れることも
千葉県内で比較しても、それほど風は強まらない松戸市周辺ですが、 台風接近時などは強い風が吹くことはあります。
2018年の10月1日、台風24号が本州を北上した際、千葉市で40メートルを超える暴風が観測されましたが、 松戸市周辺でも強い風が吹きました。
特に千葉県が台風の進行方向東側に入るコースで北上するときは、 松戸市周辺でも風が強まりやすくなります。
最大瞬間風速が20メートル以上になると、雨戸やシャッターが揺れたり、 看板やトタン屋根がはずれ始めるようになります。
また、屋根瓦が剥がれてしまったり、高い所での作業は危険なレベルの風となりますので、 屋外での外壁塗装の作業は控えたほうがいいでしょう。
執筆者
多胡安那(気象予報士・熱中症予防管理者(指導員))
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