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ネットの口コミに塗装業者の悪い点を書いたら、名誉棄損のため削除するよう連絡がありました…。

ネットの口コミに塗装業者の悪い点を書いたら、名誉棄損のため削除するよう連絡がありました。口コミは削除しないといけないですか?

お客様からのお悩み 先日、我が家の外壁塗装工事を塗装工事業者にお願いしたのですが、時間どおりに来ない日があったり、休憩時間に車の中でなく我が家の庭でタバコを吸ったり、最終確認では塗り残しがあったりと、問題点が多数ありました。
外壁塗装工事に関して、不満な部分はとりあえず塗り直しをしてもらうことができ、工事自体は終わったのですが、工事自体だけでなく工事中の態度も含めて、あまりにも酷いことが多かったので、ネットの口コミ欄にその外壁塗装業者に対して、工事中に不満に思ったことや悪かった点を書きました。
すると後日、その塗装工事業者が弁護士を雇ったようで、弁護士から警告書が届きました。
警告書には、私の書き込みが「名誉棄損」にあたること、書き込んだ口コミを削除するよう求めること、削除しない場合には名誉毀損で訴えると連絡がありました。
私が書いた口コミ内容は真実にもかかわらず、削除しなければいけないのでしょうか?
また、もしも損害賠償を請求された場合は、応じなければいけないのでしょうか?

外壁塗装をしてもらった塗装業者さんの不満点を、インターネットの口コミに書いたあと、名誉棄損の訴えや口コミの削除を求められた場合、応じなければいけないのか、小栗総合法律事務所の小栗先生に聞いてみました。塗装業者の口コミについて悩みを抱えるあなたのお力になれれば嬉しいです。

ご質問への回答

はじめに

昨今、インターネットには一般のユーザーが会社や店舗に対して行う口コミであふれています。

実際、食事をするお店を選ぶとき、工事をどこの業者さんに依頼するか悩んでいるときなど、インターネット上の口コミを参考にする方は少なくありません。

インターネット上の口コミが、このように一般のユーザーのサービスや商品選びに重大な影響を与えうるという状況では、書き込みひとつで書かれた会社を倒産させる可能性もあります。

ここでは、どんな書き込みが許され、あるいは許されないのか考えていきましょう。

削除に応じなければならないか、損害賠償請求に応じなければならないかは、あなたの書き込みが社会的に見て違法性があるか、ないかによって異なります。

書き込みによって生じる可能性がある責任

法的に責任があると一口に言っても、その責任の内容は「刑事責任」「民事責任」に分けられます。

刑事責任 刑事責任とは、罪を犯したことに対して刑罰を受けなければならない、という責任のことで、刑事裁判を通じて刑罰を課されます。インターネット上の口コミは、場合によっては名誉毀損罪(めいよきそんざい)、業務妨害罪、信用毀損罪に該当することがあります。
民事上の責任 民事訴訟を通じて決まる責任であり、一般的には損害賠償責任となりますが、名誉毀損の場合は謝罪広告が認められることもあります。

インターネットへの書き込みによって名誉毀損罪に問われるか

名誉毀損罪の構成要件

  • 公然と(たくさんの人が認識できる状態)
  • 事実を適示し(事実を明らかにすること)
  • 人の名誉を毀損すること ※「人の」「名誉の毀損」の意義については諸説あります。
    「人の」=「自然人と法人」
    「名誉の毀損」=「人の社会的評価を下げること」
    以上のように理解しておけばおおむね問題ありません。

インターネット上の書き込みは不特定多数の人が閲覧することができ、「公然」という要件を満たすことは確実です。

そして、今回のご相談では「本当のことなのに…」というようにご不満があるようですが、事実の指摘であることこそが名誉毀損罪の成立要件なんです。

どんな口コミの内容を書き込んだのかは、ご相談事項の中にははっきりと書かれていませんが、たとえば実際の出来事にもとづいて、

「塗装工事を依頼したら、施工範囲なのに塗られていない箇所があったり、塗りむらがあったりしたうえ、仕上がりが当初予定していた色見本と違った。あまりに雑な塗装工事だったので二度と塗装工事を頼みたいとは思いません。」

このようなものであれば、これは書かれた塗装工事業者の社会的評価を下げるものになるので、「人の名誉を毀損する」といえるでしょう。

そのため、インターネット上の書き込みに関して、書いた相手方の社会的評価を下げるような記載であれば、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

もっとも、ある行為が名誉毀損罪の構成要件にすべて当てはまるとしても、一定の事情がある場合には行為の違法性が阻却(なくなる)されることがあります(このような事情を違法性阻却事由といいます。)。

「違法性がない」と認められるための要件は次の通りです。

  • 公共の利害に関する事実の適示であり、
  • かつ適示の目的が専ら公益を図る目的であったこと
  • 適示された事実が真実又は真実であると信用できる、相応の理由があると証明されたこと

この3点が原則(刑法230条の2第1項)であり、これらをすべてクリアすると、その書き込みに違法性がないという判断がされます。

この3つの要素がすべて認められ、違法性がなくなるということはなかなかハードルが高いのですが、これを踏まえ、刑法は違法性阻却事由に関する特則を設けているので、続けて見てみましょう。

第230条の2(略)
前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

刑法230条の2第2項では、起訴されていない犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実として扱うことを定めており、同第3項では公務員または公務員候補者(例:議員選挙の立候補者等)に関する事実の摘示は同じく公共の利害に関する事実として扱うこととしています。

塗装業者への口コミが特則の第3項に該当することはまず無いですが、摘示した内容が犯罪行為に関することであり、かつ、それが未だ起訴されていないようなケースであって、事実にもとづく事柄であれば、行為自体は名誉毀損罪に該当するものであっても、230条の2第2項によって違法性はないという判断がされる可能性があります。

そのため、

「工事代金を振り込んだのに着工もせず、また着工の督促をしているうちに連絡が取れなくなり、結果的に工事代金をだまし取られた」

このような書き込みであれば、それがまだ捜査機関に認識されておらず、起訴もされていないという状況の下では公共の利害に関する事実の摘示と認められるでしょう。

そして、書き込みが、同じような被害に遭う方を減らすためという動機・目的にもとづくものであれば、公益性も認められやすいと思います。

なお、名誉毀損罪は親告罪といって、被害者が被害のあったことを告訴しない限り、起訴(刑事裁判の提起)されることはなく、この意味では示談によって解決するという意義がある犯罪類型であるといえます。

インターネット上への書き込みで名誉毀損を理由とする損害賠償の責任を負うか

今度は民事上の責任について見ていきましょう。

塗装業者としては書き込みによって売上が減少したり、書き込みを削除したりするためにかけたコストなどを損害として賠償を求めてくる場合があります。

インターネット上の書き込みによる損害賠償義務を負う場合とは、その書き込みが不法行為を構成する場合です。

不法行為の説明に関しては「名誉毀損以外で損害賠償責任を問われるか」にてお話させて頂きますが、その書き込みと売上の減少やコストの発生に因果関係が認められれば、損害賠償の義務を負う可能性があります。

名誉毀損罪以外の罪になる可能性はあるか

書き込みの内容が事実であれば、名誉毀損が成立する一方、嘘の内容を書き込んだ場合には、信用毀損罪や業務妨害罪が成立する可能性があります。

どちらの犯罪も、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて(嘘の情報を流して人や会社の信用を損ねたり、または騙す手段を使う)」という行為が構成要件となっており、両罪の違いは、保護すべき利益が「経済的な信用」か「業務の円滑な遂行」かという点です。

そのため、例えば書き込みの内容がでたらめであることが前提ですが、それぞれ下記のようになります。

  • 「あの塗装業者は、倒産寸前である」
    ⇒「経済的な信用」を害するため信用毀損罪
  • 「あの塗装業者は塗装工事中の態度が悪いのでこれを見た人はクレームの電話を入れてほしい」
    ⇒業務妨害罪

そして、信用毀損罪・業務妨害罪のどちらも、名誉毀損罪と違って非親告罪にあたることから、被害者による告訴がなくても捜査機関が主体的に捜査を行い、起訴することができます。
(もちろん、被害者との示談が無意味であるという趣旨ではありません。)

名誉毀損以外で損害賠償責任を問われるか

民事訴訟で、ある行為に損害賠償の責任を問われるのは、その行為が不法行為として評価される場合です。

そして不法行為とは、故意または過失によって他人の権利(または法律上保護される利益)を侵害することをいい、これによって相手方に損害を発生させたとき、損害賠償の責任が問われます。

ここで言う「他人の権利」または「法律上保護される利益」の意味するところは、字面だと難しく思えますが、生命身体の安全、財産、精神的な平穏、健康な生活ができる環境などあらゆることを含み、よほど保護に値しない権利利益(例えば、禁制品を売買することによって得た売上など)でない限り、これらに含まれます。

たとえば、書き込みの内容が事実に基づかない全くのでたらめであった場合でも、そのでたらめな内容の書き込みによってお店や塗装業者の評判が下がり、その結果、売上が減ってしまった場合には、売上が減った分について損害賠償責任を問われます。

弁護士からもし警告書を受け取ったら

今回ご相談の書き込みの場合は、

  • インターネット上への書き込み内容が事実にもとづく内容を含むもの
  • 書かれた塗装工事業者の社会的評価を下げるもの

このように言えるため、名誉毀損罪となる可能性があり、また、名誉毀損を理由とする損害賠償責任が生じる可能性があります。

さらに、これに関しては違法性がなくなるための要件も満たしません。

そのため、書き込みを継続的に公開しておくことへ強いこだわりがなければ、削除に応じるというのも一つの手段です。

しかしながら、せっかく削除に応じても、後になって「あの時の書き込みが原因で、売り上げが下がった。下がった分の損害を賠償しろ。」という請求をされる可能性もあります。

最終的な解決にあたっては、ご自身だけではなく、弁護士に相談し、後々何かしら請求されることがないように、弁護士を代理人として示談交渉を行って合意文書を作成しておくのがお勧めです。

小栗先生の紹介ページはこちら 今回、外壁塗装の口コミについてご回答いただいた、小栗先生の詳細は下記ページで確認できます。 今ご覧いただいている記事以外にも、外壁塗装で起きるトラブルについて記事を監修いただいているので、そちらも下記ページからご確認いただければと思います。
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