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アパートの入居者からクレームを受けて賠償を求められた場合、塗装業者へ請求できますか?

お客様からのお悩み 私は、いくつかのアパートを所有しており、アパートのオーナーとして所有アパートの管理を行っています。
私が所有する一つのアパートの外壁が経年により劣化してきたので、外壁塗装工事を行うことにし、塗装業者さんに外壁塗装工事の依頼をしました。
ところが、実際にアパートの外壁塗装工事が始まり、外壁の高圧洗浄の工程に入ったところで、アパートの入居者から「高圧洗浄をやるとなぜ前から教えてくれなかったのか。窓が開いていたために、洗浄後の汚い水が家の中に入ってしまった」というクレームがありました。
また、その入居者は汚水が家の中に入ったことについて、何かしらの賠償を求めているようで、「誠意を見せろ」と言ってきました。
こうした場合、私は塗装業者さんに対して慰謝料や損害賠償の請求をすることはできるのでしょうか。

アパートの外壁塗装で入居者から慰謝料や損害賠償を請求された場合について、小栗総合法律事務所の小栗先生に聞いてみました。アパートの外壁塗装で起きる入居者からのクレームについてお悩みのあなたのお力になれれば嬉しいです。

ご質問への回答

はじめに

アパートのオーナーさんにとって、入居者とのトラブルは頭の痛い問題ですね。

ここでは、

  • 入居者からの「誠意を見せろ」という要求に金銭で応じなければならないのか
  • 塗装業者にもこれを負担してもらうことはできるのか
  • そもそも住民とのトラブルを防ぐためにオーナーとしては何をするべきだったのか

これらを考えていきましょう。

※ここでは、管理会社等を通さずにオーナーが直接アパートの維持・管理を行っていることを前提としています。

アパートの外壁塗装工事で注意すべきこと

戸建ての外壁塗装工事であれば依頼主=住んでいる人であることが基本なので、ご近所へのあいさつ回りで済みます。

しかし、アパートの場合は一般的に、オーナーさんと各部屋の入居者とで賃貸借契約を結び、その契約上、外壁塗装等の修繕はオーナーさんの義務とされていることがほとんどですので、外壁塗装工事の依頼はオーナーさんが行うことになります。

しかし、工事によって実際に日々の生活の影響を受けるのは各部屋の入居者です。

そのため、外壁塗装工事を実施する場合には、必ず事前に外壁塗装工事を行うことを入居者に知らせて、入居者の生活にできるだけ影響が出ないように配慮しておく必要があるでしょう。

入居者の方々に知らせておくべき内容としては、

  • 外壁塗装工事の内容
  • 外壁塗装工事のスケジュール(予定している工事期間)
  • 外壁塗装工事を行う時間帯
  • 外壁塗装工事を行うことで発生する可能性のあることがら(騒音、汚水、粉塵など)
  • 塗装業者の名称・工事責任者の名前・連絡先

これらがありますが、入居者にとって必要なことがほかにもある場合は、あらかじめお伝えしておくのがオススメです。

賃貸借契約で特別に定めていない限り、入居者への伝達の方法にルールや制限はないので、入居者それぞれにお知らせのビラを渡してもかまいませんし、入居者への工事のお知らせを塗装業者に任せても法律上の問題はありません。

しかし、各入居者にきちんと工事のお知らせが行き届いているかを確認するためにも、オーナーさん自ら入居者の方々にお知らせをしておくことをオススメします。

入居者のクレームにどう対応するべきか

ご相談のケースでは、アパートの入居者の方から

「なぜ事前に高圧洗浄をやると教えてくれなかったのか。窓が開いていたので、洗浄後の汚い水が家の中に入ってしまった」

このようなクレームがあったとのことですが、対応方法をいくつか想定できるケースごとに見ていきましょう。

事前に外壁塗装を行うことを知らせていなかった場合

外壁塗装工事をすることを、あなた自身で入居者に知らせなかった場合や、塗装業者にお願いしたつもりが実際には入居者に十分伝わっていなかった場合です。

入居者としては、外壁塗装工事をいつやるか、また、工事をした場合の影響などを知ることができず、窓を開けてしまっていたということになります。

この場合、外壁の高圧洗浄を実際に行った塗装業者が入居者の部屋を汚してしまったことに対する責任を負います。

しかし、オーナーであるあなたに、全く責任はないのでしょうか。

塗装業者は、あなたが依頼した外壁塗装工事の一工程として、高圧洗浄を行いました。

これは、本来オーナーであるあなたが、入居者の方々と契約をしている「アパートの外壁の修繕義務」を果たすために塗装業者へ工事をお願いしたということなので、オーナーであるあなたと塗装業者との間には、塗装工事に関する請負契約が存在するはずです。

そして、請負契約の注文者(今回のケースではオーナーさん)は、基本的に請負人(塗装業者)が第三者に対して負わせてしまった損害について賠償する義務は負いませんが、例外的に、請負人に対する注文や指示に間違いや漏れがあった場合は、賠償する義務を負うことがあります(民法716条)。

つまり、塗装業者に対する注文や指示にあたって、オーナーさん側に伝達不備などの過失があれば、オーナーさんにも入居者の損害を賠償する責任が発生します。

たとえば、オーナーさんが塗装業者に対して、入居者の方々へ工事を知らせることを依頼せず、あるいはそのアパートでいつもお知らせをする時の方法を塗装業者に伝えなかったことで、入居者の方々が工事の日程や内容を把握できなかったのであれば、これはオーナーであるあなたの落ち度でもありますから、汚水によって発生した入居者の損害を賠償する責任が生まれるでしょう。

事前に外壁塗装を行うことを知らせていた場合

事前に外壁塗装を行うことを知らせていなかったケースとは逆に、オーナーであるあなたも、また塗装業者も、十分に事前のお知らせをしていたにも関わらず、その入居者が高圧洗浄を行う日や時間を忘れていた、あるいは、知っているにも関わらずわざと窓を開け放していたようなケースはどうでしょうか。

賃貸アパートの入居者は、一般的に賃貸借契約上、アパートの修繕があればこれを拒否できないとされています。 参考:国土交通省編 賃貸借標準契約書 第9条第2項

そのうえ、アパートが集合住宅であることを考慮した場合、一般的には修繕工事にともなう不利益(高圧洗浄の際は自分の部屋の窓を閉めるといったこと)を受け入れる義務があると考えられます。

そのため、工事のお知らせをしたにも関わらず入居者が、わざと窓を開けていた、または、うっかり窓を閉めるのを忘れていた結果、入居者の部屋の中に汚水が浸入したケースでは、塗装業者もオーナーであるあなたも汚水によって発生した損害を賠償する義務はないと考えられます。

トラブル・クレームをあらかじめ防ぐには

集合住宅であるアパートの場合、入居者にはいろいろな方がいて、生活時間もバラバラですから、トラブルやクレームを100%なくすというのは難しい事かもしれません。

しかし、前にもお話しした通り、アパートの塗装工事に関する十分な情報を入居者に対してしっかり伝えることこそが大切です。

塗装業者があいさつ回りで伝えたり、不在の場合はチラシを置いてもらったりするのが一般的ではありますが、よほど信頼のできる塗装業者でなければ、オーナーのあなたご自身で外壁塗装工事があることをお伝えになる方が、後々、万が一トラブルになったときのことを考えると安心です。

そして、実際にトラブルになってしまった場合、当事者同士では冷静な話し合いをすることが難しい場合も少なくありません。

小栗先生の紹介ページはこちら 今回、アパートの外壁塗装で入居者からクレームが発生した時の対応についてご回答いただいた、小栗先生の詳細は下記ページで確認できます。 今ご覧いただいている記事以外にも、外壁塗装で起きるトラブルについて記事を監修いただいているので、そちらも下記ページからご確認いただければと思います。
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